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正しいコスト削減の実施方法

2020年からのコロナ禍での収益悪化時はもちろんですが、通常期でも様々な理由でコスト削減を行う必要がある時があります。そんな時、闇雲にコスト削減をすることは非常に危険です。
例えば、売上を伸ばすための販売促進の費用を狙いなく削減することで、売上が減少してしまい折角コスト削減したのに、損益分岐点売上を超えなくなってくることもあります。

コスト削減の方針

会社によって、それぞれの状況の違いはありますが、基本的な考え方を整理してみましょう。
一般的な損益計算書は以下のような構造になっているのは、改めて言うまでもないと思います。

 売上高
  売上原価      
 売上総利益(粗利)
  販売費及び一般管理費
 営業利益

コスト削減を行う際、どのような考え方でコストの取捨選択をするかの方針がとても重要です。

例えば、以下のような方針が考えられます。
 1. 売上アップにつながるコストは減らさない
 2. 売上アップに直結しないコストは聖域なく削減する
 3. 苦しくても未来のための投資枠を一定(例えば総コストの5%)確保
 4. 人件費の削減は最後の最後の手段にする

例えば、一般的な勘定科目を★印のような集計科目(いくつかの勘定科目を合計した科目)を作ってみると良いと思います。

 売上高
  売上原価     
 売上総利益
  ★売上アップ費   〜マーケティング費、販売手数料、顧客紹介料、パンフレット製作費など  
  ★売上アップ人件費 〜マーケティング・営業部門の人件費
  ★事業運営費    〜製品配送費、保管費、配送委託費等
  ★事業運営人件費  〜物流・サポート・技術部門の人件費
  ★未来費      〜新製品開発、中長期視点での採用費や人件費といった未来のための投資
  ★事業外人件費   〜役員報酬、バックオフィスなどの人件費
  ★その他費用    〜上記以外の会社運営に必要な費用 営業利益
 営業利益

上記のような集計科目を作ると、コスト削減が単に縮小均衡のものではなくなり、未来のため、売上アップの源資を作るためのコスト削減になりやすくなります。

費用対効果_s-1


方針別の実行指針


方針1
「売上アップにつながるコストは減らさない」

「売上アップ費」は効果を検証しながら従来以上に費用をかけていきます。その源資は「その他費用」の削減分となります。「売上アップ人件費」については、事業外に配置されている人材を移すことによってマンパワーの強化を検討してみるのも良いと思います。

方針2
「 売上アップに直結しないコストは聖域なく削減する」

「その他費用」については、その必要性を根本から見直し、聖域なく削減していきます。その時の切迫度によって、取り組む強度は変わってくると思いますが、「以前からやっているから」「慣習で」「付き合いで」といった理由で支払い続けているものは削減の対象となります。
ここで確保した削減額が、本来、お金をかけるべき売上アップにつながる費用や未来を作るための費用の源資になりますので、真剣に取り組む必要があります。

方針3
「 苦しくても未来のための投資枠を一定(例えば総コストの5%など)確保」

経営は5年後、10年後を見据えながら行うものです。
経営環境の変化、企業内部の変化などの様々な観点から経営の方向性を定め、その経営目標に向けて、布石を今、行わないと、その経営目標は自然に達成できるものではありません。
この費用を確保することの本質的な狙いは、ついつい先送りになりがちな未来のための活動を一歩でもスタートすることにつながります。

方針4
「人件費の削減は最後の最後の手段にする」

短期的な収益改善には、人件費の削減は大きな効果があります。しかし、その傷跡も大きく、残った社員にも「この会社は、危なくなったら経営努力の前にまず社員に負担を強いる会社」という印象を強く残します。
社員は疑心暗鬼になり、転職が可能な有能な社員ほど離職していきますのでボディーブローのように会社を弱体化させていきます。
目先の収益改善より、「企業は人なり」を実践し、難局を乗り越えた戦友を増やしていきましょう。


最後に

会社のコストには、維持・増やすべき費用と、削減すべき費用があります。その分類を間違えることなく、費用をコントロールすることが肝要です。
それも、収益が悪化した時に慌ててコスト削減に取り組むのではなく、取り組める選択肢が格段に多い平常時からコスト構造の見直しをしていくことで、緊急時にも対応できる筋肉質の会社に変わることが可能となります。


コスト削減を行う上で、誤った方針や方向性で進めてしまうと、企業にとっては大きな打撃となります。コスト削減を実行したいけれども、不安がある…誰かに相談したい。などお考えの経営者の方は、CFOジャパン株式会社にお気軽にご相談ください。